早稲田大学商学部は、日本を代表するビジネス教育の場であり、設立以来、経済界や政界に多くの著名人を輩出していることで有名です。
今回は早稲田大学商学部の紹介と、各教科の基本情報、主な進路や受験生の方からよくある質問を、現役早大生(法学部・2年)が解説します。
早稲田大学商学部の基本情報
まず早稲田大学商学部の基本情報を解説していきます。
設立:1904年
所在地:〒169-8050 新宿区西早稲田1-6-1(早稲田キャンパス・11号館)
アクセス:JR 山手線 高田馬場駅から徒歩20分
西武 新宿線 高田馬場駅から徒歩20分
東京メトロ 東西線 早稲田駅から徒歩5分
東京メトロ 副都心線 西早稲田駅から徒歩17分
都バス 学02 (学バス) 高田馬場駅ー早大正門
東京さくらトラム (都電 荒川線) 早稲田駅から徒歩5分
学生数:3,791人(全体:38,776人)※2023年5月1日時点
男女比:7:3 ※2023年5月1日時点
学科:なし
※出典:https://www.waseda.jp/top/access/waseda-campus 、https://waseda.app.box.com/s/181q6hd6jwbl1yrs02i5u5p3rtz35yd8
因みに早稲田キャンパスはとても立地が良くて、高田馬場駅からJR 山手線でJR 新宿駅、池袋駅までそれぞれ2駅でつくことが出来ます。他にも東西線で東京駅(大手町駅)まで11分で到着できます。
偏差値と倍率・合格最低点
受験する大学・学部の偏差値や合格最低点は、模試を受ける際や過去問対策をする際の目標値となりますので、対策を始める前に知っておくことはとても重要です。2024年度のデータを入試方式別に表にまとめたので、ぜひご覧ください。
地歴・公民型 | 数学型 | |
偏差値 | 67.5 | 65.0 |
倍率 | 9.3 | 5.8 |
合格最低点 | 128.7 | 109 |
出典:https://passnavi.obunsha.co.jp/univ/3190/difficulty/?facultyID=030 、https://www.waseda.jp/inst/admission/assets/uploads/2024/05/2024_3.pdf、https://www.waseda.jp/inst/admission/assets/uploads/2024/05/kekka_240509.pdf
「地歴・公民型」と比べて、「数学型」の方がやや倍率や偏差値が低くなっています。したがって数学が得意な方は、後者を受験することがおすすめです。
合格最低点について、早稲田大学は素点に対して独自の操作を加えることで、選択科目の難易度の差などを調整しているため注意が必要です。詳細は次章で解説しているので、ぜひご覧ください。
合格最低点に関する注意点
大学から公表されている「合格最低点」は素点ではなく、成績標準化後の得点なので過去問等で自己採点をする際は注意してください。
「成績標準化」とは早稲田大学公式によると「科目間の難易度の差による有利・不利をなくすこと、各試験教科の配点ウェイトを合計点に適切に反映することを目的として、標準化等による得点調整を行う」ことをいいます。商学部はこの得点調整を、「地歴・公民型」「数学型」いずれの方式でも全科目に適用しているので、素点がそのまま試験成績に反映されることはありません。
試験科目の配点・試験時間
商学部の一般入試における、試験科目ごとの配点・試験時間を表にまとめると以下の通りです。商学部の一般入試は2024年現在、2つの方式があります。
1つ目は「地歴・公民型」という方式で、2つ目は「数学型」という方式です。それぞれ試験科目や配点が異なっているので、注意してください。
2024年度までは「英語4技能テスト利用型」という方式がありましたが、2025年度からは募集停止となり、廃止されました。
地歴・公民型
科目名 | 配点(点) | 試験時間(分) |
外国語(英語、ドイツ語、フランス語、中国語、韓国語から一つ選択) ※英語以外は共通テストの得点を利用 | 80 | 90 |
国語 | 60 | 60 |
地歴・公民(日本史、世界史、政治・経済から一つ選択) | 60 | 60 |
合計 | 200 | ー |
外国語が一番配点が高いことがわかります。したがって、外国語を一番時間をかけて対策することがおすすめです。
数学型
科目名 | 配点(点) | 試験時間(分) |
外国語(英語、ドイツ語、フランス語、中国語、韓国語から一つ選択) ※英語以外は共通テストの得点を利用 | 60 | 90 |
国語 | 60 | 60 |
数学(数Ⅰ・A・Ⅱ・B) | 60 | 60 |
合計 | 180 | ー |
数学型は地歴・公民型と異なって、どの科目も配点が均等に割り振られています。
商学部の数学は難易度が相当高いため、受験生同士であまり差がつかないと言われていることから、外国語や国語の得点を伸ばすことが特におすすめです。
各教科の基本情報
志望校の合格を目指すにあたって、本番で解くことになる試験問題の傾向と対策を知ることはとても重要です。
ここでは商学部独自の試験問題が出題される外国語(英語のみ)、国語、社会、数学の基本情報を解説します。英語以外の外国語につきましては共通テストの点数を利用するため、この記事では掲載しません。
英語
例年大問は全部で5つあって、1つが会話問題、残り4つが長文問題となっています。難易度は早稲田の中では比較的易しいレベルであるといわれています。
Ⅰ:会話問題
Ⅱ~Ⅴ:長文問題
英語は多くの大学・学部の入試で一番高い比重を占めており、それに加えて対策するのに一番時間がかかる科目と言う人も多いです。
詳細な傾向と対策についてはこちらの記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
国語
例年大問が全部で3つ出題されています。内訳としては、現代文・古文・漢文が1題ずつです。
Ⅰ 現代文
Ⅱ 古文
Ⅲ 漢文
「国語」は文系科目の中で最も対策のしづらい科目だという人もいます。ですがしっかりと対策をしていけば、得点源になる可能性があります。
詳細な傾向と対策についてはこちらの記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
日本史
例年大問が6つ出題されており、マークシート式の問題と記述式の問題の併用となっています。さらに毎年1〜2問ほど短文論述が出題されることも特徴です。
日本史はとにかく知識量が求められることから、地道な暗記作業を要する科目です。とりわけ早稲田大学の日本史は、教科書外の範囲から出題されることも多いため、膨大な暗記量が求められます。
詳細な傾向と対策についてはこちらの記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
世界史
例年大問が4つ出題されます。その内3つは専らマークシート式の問題から構成されていて、残り1つが専ら用語記述・長文論述(100字以内)から構成されている問題が出題されます。
Ⅰ~Ⅲ:マークシート
Ⅳ:用語記述・長文記述
早稲田大学の世界史は、教科書外の範囲から出題されることもあるため、膨大な暗記量が求められる科目です。その上長文論述問題が出題されることでも有名です。
詳細な傾向と対策についてはこちらの記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
政治・経済
大問は計4つで構成されていて、記述式とマークシート式の問題が併用されています。年度によって30字ほどの短文論述が出題されたり、計算問題が出題されたりするもので、単純な暗記のみでは対策として不十分でしょう。
早稲田大学の政治・経済は、教科書外の範囲から出題されることも多いため、膨大な暗記量が要求されています。
詳細な傾向と対策についてはこちらの記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
数学
大問は計3つで構成されていて、記述式の問題のみ出題されます。例年1つ目の大問で小問が4つ出題される小問集合の形で出題されて、2つ目、3つ目がそれぞれ独立した問題で、小問が (2) まで出題されます。
早稲田大学商学部の数学は、文系最難関といわれるほどの高難易度を誇っています。そのため念入りな対策が必要となります。
詳細な傾向と対策についてはこちらの記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
オープンキャンパス情報
試験本番は基本的に早稲田キャンパスか戸山キャンパスのどちらかの教室で受験することになるので、下見を行うためや、志望校合格のためのモチベーション向上のために実際に現地に赴くことはとても重要です。
早稲田大学は毎年夏に早稲田キャンパス、戸山キャンパス、西早稲田キャンパス、TWIns(先端生命医科学センター)でオープンキャンパスを開催しています。商学部を第一志望にしている方であれば、早稲田キャンパスのオープンキャンパスに参加することをおすすめします。詳細は公式HP をご覧ください。
他にも地方に住んでいて、東京に直接赴くことができないという方向けに、オンラインでオープンキャンパスに参加することができます。こちらも詳細は公式HP をご覧ください。
4年間の学費と主な学内奨学金
早稲田大学は私立大学なので、文系の商学部でも国公立大学に比べると学費がかなり高額です。ここでは4年間で発生する学費の合計と、主な学内奨学金を表にまとめましたので、ぜひご覧ください。
4年間の学費(2025年度)
第1年度 | ¥1,265,000(うち入学金¥200,000) |
第2〜4年度 | ¥1,251,000 |
合計 | ¥5,018,000 |
結果的に最低でも4年間で約501万円発生することになります。ちなみに国立大学は学部問わず4年間で約243万円と法令で定められているので 、その2倍以上も高額なことがわかります。
(出典:https://www.hokugin.co.jp/cs/loan/gakushi/contents/001.html )
この通り人によっては相当高額に感じられる金額です。しかし早稲田大学では「学内奨学金」制度によって負担を減少させることができます。詳細は次章で解説しているので、ぜひご覧ください。
主な学内奨学金
確かに商学部の学費は年間約130万円と相当高額に感じる人もいると思います。しかし、早稲田大学は独自の「学内奨学金」を設けていて、そのすべてが返済不要となっています。さらに学外奨学金とも併用できる(学外奨学金の規定によっては不可能な場合もあります)ので、より経済的負担を軽減することができます。
名前 | 奨学金額 | 奨学金支給期間 |
めざせ!都の西北奨学金 | ¥450,000(商学部の場合) | 休学期間を除く4年間 |
紺碧の空奨学金 | ①入学検定料(大学入学共通テストの検定料は除く)および入学金免除②授業料、実験実習料、その他諸経費を全額免除③家賃補助・生活支援金として上限月額9万円 | 正規の在学中4年間まで |
※応募条件や、募集人数、選考内容等の詳細事項は、各奨学金の公式HPを参照してください。
他にも様々な学内奨学金も設けられているので、ぜひ早稲田大学奨学課の公式HPをご覧ください。学外奨学金につきましても該当する奨学金の各公式HPをご覧ください。
カリキュラム
ここでは商学部のカリキュラムを解説します。以前と比べてより魅力的なカリキュラムとするべく、2024年度から大きくリニューアルされました。
※以下出典:https://www.waseda.jp/fcom/soc/assets/uploads/2024/03/11a714eef30cdf3f9eadd1db4dbef5d1-1.pdf
専門基礎科目の充実
商学部の基礎的素養を身につけるため、必修科目と選択必修科目を設置しています。
特に分析力・解析力を身につけるため、「統計リテラシーγ」、「Pythonによるデータ解析」を必修化しました。「統計リテラシーγ」とは、1年生春学期のうちに履修する「統計リテラシーα」や「統計リテラシーβ」よりもさらに発展的な内容を学ぶもので、より統計についてより専門的な知識を身につけることができます。「Python」とは、プログラミング言語(コンピューターが一定のプログラムを実行するように命令するための独自の言語ないしコード)のことで、プログラミング言語の中でもシンプルで読みやすいことから主にプログラミング初心者に重宝されています。
専門トラックの再編
「専門トラック」とは所謂「ゼミ」のことです。ゼミとは「担当教員の指導のもと、自らのテーマを設定し、資料収集や調査に基づいて作成されたレポート・プレゼンテーション使用等を用いて、他の学生と徹底的に討論する形式の講義」(出典:https://www.waseda.jp/fcom/soc/assets/uploads/2016/06/seminar_summary_2017.pdf )のことを言います。少し堅苦しい言い方ですが、要は「自分の専門科目をさらに深く勉強するために、その科目を研究する教授の元で勉強する」という認識で大丈夫です。商学部は3年次に、大きく分けて以下のようなジャンルからそれぞれの「専門トラック」を選ぶことができます。
①経営
②会計
③マーケティング
④ファイナンス
⑤保険・リスクマネジメント
⑥ビジネスエコノミクス
おすすめの資格
英語や簿記などの資格試験は、就活や大学院進学の際に自分の強みを表すのに役に立ちます。さらに司法試験や公務員試験のように、自分の将来を大きく変えるような資格もあります。
ここでは他の学部と比べて、商学部で取りやすい資格を解説します。
日商簿記検定(2級以上)
簿記は、企業の経営活動を記録・計算・整理して、企業の経営成績と財政状態を明らかにする技能で、この習得度を測るのが、日商簿記検定試験です(出典:https://kentei.tokyo-cci.or.jp/boki/about/ )。3級から1級までの三段階の難易度があります。就職活動などで履歴書に記載してアピールポイントにしたい場合は、2級以上を取ることが目安となります。
商学部は必修科目として簿記試験の対策をする科目があるので、他の学部と比べて有利になる可能性があります。
公認会計士試験
「公認会計士」は企業等の監査・会計のプロです。企業から独立した立場で「監査証明」をすることが主な業務内容で、他にも「会計」「税務」「コンサルティング」を業務とする公認会計士もいます(出典:https://jicpa.or.jp/cpainfo/introduction/about/ )。
公認会計士試験は「司法試験」「医師国家試験」に並んで「三大難関国家資格」の一つとされています。問題の難易度はかなり高いため、合格するには入念な対策を早期から始める必要があります。
商学部では公認会計士試験で必要な「会計」や「企業法」「簿記」等が必修科目となっていることが多いので、他の学部と比べて有利になる可能性があります。
卒業生の主な進路
※以下出典:https://www.waseda.jp/inst/career/assets/uploads/2024/05/ac41a239371385b2d4b5afb2fc2bcb65.pdf
まず大まかな進路を解説します。公式の発表によると、2022年度卒業生の進路は以下の通りです。
進路 | 人数 | 割合 |
就職 | 739 | 87.7% |
進学 | 46 | 5.4% |
資格試験 | 24 | 2.8% |
その他 | 33 | 3.9% |
合計 | 842 |
商学部は就職を意識している人が多いといわれているので、他の学部と比べても就職を選択する人の割合は多いです。次章では卒業生の主な就職先を解説します。
主な就職先
もし学部を卒業した後に就職することを考えているのなら、就職したい業種を予め考えておくとよいかもしれません。そこで卒業生の就職先の業種のグラフを公開したいと思います。
※2023年5月時点
一般的に経済学部、商学部は金融業界の企業への就職に強いと言われています。早稲田も例外ではなく、グラフを見ると5人に1人以上は金融系の企業へ就職をしています。
よくある質問
ここでは受験生の方からよく頂く質問をまとめました。受験中や入学前は不安なことが色々あると思うので、ぜひご覧ください。
- Qどのくらいから試験勉強を始めましたか?
- A
高校2年生の4月から受験勉強を始めました。より詳しい筆者の受験勉強開始時のエピソードについて気になる方は、こちらの記事(https://www.kame.co.jp/column/column000069-html のURLを添付してください)や、こちらの記事(「https://www.kame.co.jp/column/column000073-html のURLを添付してください)をご覧ください。
- Q1日何時間くらい勉強しましたか?
- A
高校2年生の春から高校3年生の春にかけて平日は1日4時間、休日は7時間ほど勉強しました。高校3年生の夏休みからは更に追い込んで、平日は5時間ほど、休日は10時間程勉強しました。ちなみに早慶に合格するための勉強時間の合計の目安は、約2,800時間と言われています(出典:https://jyuke-labo.com/daigakujyukentaisaku/soukeijouri/ )。
- Qどの科目に重点を置きましたか?
- A
英語に重点を置きました。殆どの大学学部の入試は英語の比重が大きいので、英語を重点的に勉強することがおすすめです。
- Q学生の雰囲気はどのような感じですか?
- A
よくネットでは「チャラ商」(商学部はチャラい学生が多いという意味)などと揶揄されていますが、実は真面目で賢い人も少なくない印象です。少なくとも早稲田の商学部は全然それに該当しないと筆者は思います。
- Q具体的にどのようなものを勉強しますか
- A
商学部は確かに何を勉強するのかイメージをしづらいですが、「経済学部」や「経営学部」に近い印象です。主にビジネスや企業活動に関する科目を学ぶことになるので、1年生の必修科目として「統計リテラシー」(数学に近い)や「ビジネス法」(民法、会社法等)があります。
まとめ
今回は早稲田大学商学部の基本情報や科目ごとの傾向と対策、進路などについて解説しました。
早稲田大学商学部は「簿記」や「統計」など、将来社会人として必要な知識を身につけられる講義が多く設置されているほか、公認会計士試験に合格するのに有利になる可能性がある科目が多く必修となっているため、卒業後にビジネスパーソンとして活躍したり、公認会計士になることを志望している方にとっては魅力的な学部です。
毎年かなり高い倍率、合格最低点を誇っているため、合格難易度は高いと言えるでしょう。しかし試験問題は標準的な難易度の問題が多いと言われています。したがって基礎固めを徹底すれば、合格に近づくことができるでしょう。
最後に、「第一志望に合格することは簡単なことではない」とよく言われています。筆者も法学部を第一志望に受験勉強をしていた時は、中々上がらない偏差値や過去問の正答率によく頭を悩ませていました。しかし最後まで地道に過去問演習を積み重ねた結果、本番では今までで一番高い正答率で合格することができました。どうか「地道に頑張る」ことを意識しながら、第一志望への合格をつかみ取ってください。筆者は早稲田で待っています。
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