内申点が大切な理由
高校受験の際に非常に大切な「内申点」。しかし、「どのようなものか、よくわからない」という方も多いようです。今回は、内申点の大切さについて詳しく解説します。
内申点・内申書とは
「内申点」とは、中学校9教科の5段階評定を点数化したもので、それを記載して受験校に送られる書類が「内申書」(調査書)です。
内申点が高校入試の合否判定にどう用いられるかは都道府県ごと(私立の場合は学校ごと)に異なりますが、「学力検査(入試)の得点」と「内申点」の両方で判定する場合が多いため、できるだけ高い内申点を取っておくことが大切です。
中1・中2の成績まで含まれる場合もあるため、志望校の合否判定方法をしっかりチェックし、できるだけ早い時期から、毎日の努力を積み上げておきましょう。
高校入試の合否に大きく影響
内申点は、公立私立問わず高校入試の合否に大きく影響します。公立高校の場合、内申点はすべての都道府県で判定に活用されており、私立高校でも、内申点が高いことで事実上の合格確約を得られるケースがあるなど、近年いっそう重視されています。
つまり、内申点が高ければ受験する前から有利だということです。逆に、内申点が低ければ、当日の学力検査で高得点を取って挽回する必要があります。気持ちに余裕をもって実力を発揮するには、内申点が高いにこしたことはありません。
成績向上には積み重ねが必要です。中3になって努力を始めても間に合わないこともあり得ます。受験校を選ぶ際には、内申点によって偏差値帯を絞り込むことが多いため、「この点数では行きたい高校には手が届かない」「もっと早くからがんばっておけばよかった…」と後悔することにもなりかねません。満足いく高校選びをするためには、中学入学後少しでも早い時期から、内申点を上げる努力をしておくことが大切です。
東京都での高校入試における内申点の計算方法
では、内申点が実際どのように算出されているのか、東京都の例を見てみましょう。
東京都の場合、内申点は中3の成績のみで算出されています。
一般選抜(学力検査による選抜)では、中3の5教科(国数社理英)の成績を5段階で評価し、実技の4教科(音楽・美術・保健体育・技術家庭)は、学力検査を行わない分、5段階評定を2倍して点数化されます。
つまり、「5教科×5段階評定」+「実技4教科×5段階評定×2倍」=65点満点です(芸術および体育に関する学科の内申点は、算出方法が異なります)。
推薦選抜では、多くの高校が評定を点数化して内申点としています。「観点別学習状況の評価」(9教科合わせて37観点のABC評価)を点数化して内申点とする高校もあります。
都道府県によって入試時に参照される内申点の範囲が異なる
東京都の例をご紹介しましたが、何年生の成績が入るのか、また、学力検査と内申点の評価の割合をどうするのかは、都道府県や学校によって大きく異なるため注意が必要です。お住まいの都道府県や志望する私立高校ごとにしっかりチェックしましょう。
神奈川県の内申点算出方法
神奈川県では、中2からの成績が内申点として点数化されます。
中2の9教科の成績を5段階評価して45点、中3の成績は9教科を5段階評価し、それを2倍して90点、合わせて135点満点です。
ただし、一部の高校では、特定の教科(3教科以内)を2倍まで重く見る例もあります。
千葉県の内申点算出方法
千葉県では、中1から中3まで、全学年の成績が同じ重さで点数化されます。各学年における9教科の5段階評価(45点)×3学年=135点満点です。
ただし、千葉県の場合は、そこに各高校で定めた数値をかけて内申点としています。かける数値は原則1ですが、0.5~2の間で各高校が定めています。
また、内申書のうち、評定以外の記載事項についても、各高校の定めた基準によって、最大50点まで内申点に加点されています。
埼玉県の内申点算出方法
埼玉県では、千葉県と同じく中学3年間の9教科が5段階評価で点数化されますが、各学年の成績をどのような比重で評価するかは、高校や学科コースによって異なります。
各校の中1:中2:中3の割合を見ると、「1:1:2」「1:1:3」「1:2:3」などとなっており、多くの高校で中3の成績が特に重視されています。
また、内申書の「特別活動等の記録」や「その他の項目」、「出欠の記録」なども、高校・学科・コースによって異なる基準で点数化されています。
内申点はどのように点数化されるのか
高校入試において内申点が重視されていることを見てきました。では、各中学校では内申点をどのように計算しているのでしょうか。
何をもとに点数化されるのか
内申点は、国語・数学・社会・理科・英語の成績はもちろんのこと、実技教科と言われる音楽、美術、保健体育、技術・家庭の成績も同じように重きを置いて算出されます。
苦手教科から逃げたり、実技教科を軽く考えたりすることなく、どの教科にもバランスよく取り組むことが大切です。定期テストは範囲が限られるため、努力次第で好成績をあげることは十分可能です。よい成績をおさめることができれば、内申点アップにつながります。
内申書に記載される成績
自分の内申点を知りたい!と思ったら、各学年の最後に受け取っている成績表(通知表)を確認しましょう。
中1・中2の分は、年度末の最終成績をチェック。それがそのまま内申書に記載されます。
3年生は、高校入試前に計算ができるよう、3学期制の学校の場合は2学期の成績まで、2学期制の学校の場合は後期の中間テストの成績までが内申点算出の対象とされることが多いようです。
3年生の途中までで内申点が計算されてしまうため、「入試が近くなってからがんばろう」とのんびりしていると、内申点を上げることができなくなります。十分注意しましょう。
内申書に記載される内容
内申書には、内申点のほかにも、さまざまな情報が記載されます。ここではそれを具体的に見ていきましょう。
内申書(調査書)の書式は都道府県ごとに異なりますが、次の①~④の項目は共通して記載されています。
①氏名
②各教科の学習の記録
③出欠の記録 ※神奈川県には記載欄なし
④総合所見・行動の記録・特別活動等の記録 ※東京都ではまとめて「諸活動の記録」
東京都
千葉県
※令和3年度入試まで使用されていた様式です。
総合所見とは
総合所見は、生徒の学習面・生活面を総合して、性格や人との関わり方、物事への取り組み方などの特徴が記載されます。よほど問題のある生徒でない限りは、特徴の良い面をとらえ、たとえば「無口でおとなしい」生徒について「控えめだが温厚で落ち着いている」とするなど、「長所」として書かれるのが一般的です。
行動の記録とは
行動の記録の記載方法は、都道府県によってかなり異なります。
千葉県の調査書では、第3学年の行動の記録として「基本的な生活習慣」「思いやり・協力」「責任感」など10項目の欄があり、その生徒が身につけている項目に〇印がつけられます。
東京都では「諸活動の記録」として、学習や特別活動の記録とまとめて文章で記載、神奈川県の調査書でも、総合所見の中のひとつとして「行動の記録」の欄が設けられています。
特別活動等の記録とは
中学校の「特別活動」とは、「学級活動」「生徒会活動」「学校行事」を指します。内申書の「特別活動等の記録」には、これらの活動においてどのような役割を担ったか、どのような取り組みをしたかが具体的に記載されます。
加えて、東京の私立標準調査書のように、部活動の記録を含める場合もあります。
内申点を上げるにはどうすればいいか
ここまで、内申点について詳しく見てきました。では、内申点を少しでも上げるためにはどうすればよいでしょうか。
定期テストの点数
内申点の中で一番大きな比重を占めているのが、定期テストの成績です。内申点を上げたければ、定期テスト対策をしっかりすることは基本中の基本と言えます。特に、中1、中2で後れを取っている場合は、中3の定期テストでは80点以上をとるつもりでがんばることが必要でしょう。
また、内申点では、いわゆる主要5教科だけでなく、実技の4教科も評価の対象です。高校入試の科目ではないからと気を抜かないよう注意しましょう。
課題の提出
内申点アップのためには、問題プリントやワークブック、作品やレポートなどの課題をきちんと提出することも重要です。課題提出を通して、学習に対する「関心・意欲・態度」が評価されるからです。
期限内にもれなく取り組むのは当然として、自分なりにわかりやすく整理したり、丁寧に細かく記入したりするなど、主体性や学習意欲が先生に伝わるよう意識しましょう。
特に苦手科目では、定期テストの得点が多少伸び悩んでも、課題にしっかり取り組んでいることで評価が上がることもあります。
授業態度、学習態度
授業態度や学習態度も、「関心・意欲・態度」を評価するための材料となります。調査書を見るとわかるとおり、「関心・意欲・態度」は全教科で設定されている、内申点算出のための重要項目です。たとえ定期テストの成績が良くても、授業態度が悪ければ内申点は上がりません。逆に、定期テストでは今一つの成績でも、熱心な授業態度が評価されればある程度挽回することができます。
授業中はしっかり集中してノートを取り、先生の質問に積極的に答えるなど、得意・不得意に関わらず興味を持って意欲的に取り組む姿勢を示しましょう。
その他に大切なこと
その他に大切なこととして、出欠の状況があります。やむを得ない病気などは別として、明確な理由もなく欠席や遅刻が多いと、基本的な生活習慣が確立していないと見なされ、内申点にも影響が出ることが考えられます。調査書に出欠の記載欄がある場合は、特に注意が必要です。
また、調査書に出欠の記載欄がなくても、遅刻や欠席が多いと学習に遅れが出やすくなります。定期テストで結果を出せず、提出物も滞りがちになれば、結果的に内申点に影響します。健康管理に留意し、できるだけ遅刻欠席をしないよう心がけましょう。
学校の授業の有効性
内申点を上げる方法を一言でいえば、「学校生活、学校の授業を大切にする」ということにつきます。
塾や部活動には真剣に取り組むのに、なぜか授業を軽んじる生徒や保護者もいます。しかし、志望する高校への合格を目指すなら、ここまで見てきたように、学校の授業に真剣に取り組むことが第一歩であり、もっとも効果的な入試対策です。
どの科目も同じように授業を受けていないか?
中学校の科目には、「予習型」と「復習型」があるのをご存知でしょうか。もちろん、全教科で予習復習がしっかりできれば最高ですが、時間が十分に取れない場合には「予習型」と「復習型」の違いを知って、その教科に合った学習をすることが成績アップへの近道です。
例えば、英語は予習型の科目です。あらかじめ音読し、単語の意味を調べるなどの予習をしてから授業に臨むことで、授業の理解が格段に深まります。予習をしていないと授業を聞いても定着が不十分になり、少しずつ積み残して苦手科目になりやすいものです。
一方、理科は復習型です。まず学校の授業をしっかりと受け、新しい知識の記憶が薄れないうちにワークなどで復習することで、効率よく学習ができます。
とはいえ、そんな予習と復習のバランスや頻度などを見極めるのは、なかなか難しいもの。そんな時は、プランナーとして家庭教師などを利用することも一手です。
学研の家庭教師は、「学習の総合的なプランナー」。予習型・復習型それぞれの科目によってすべきことを明確に提示します。学校の課題も、提出するためだけでなく定期テストで得点するためにどう活用するかをアドバイス。テストの点数はもちろん、学校での過ごし方など内申点アップのための具体的な道筋を示す、心強い味方です。
まとめ
内申点は、高校入試の合否に大きく影響するものですが、日ごろの中学校生活を大事にしていれば、それほど恐れる必要はありません。できるだけ早い時期に内申点の重要性を認識し、授業をはじめとする学校生活全般にしっかり取り組んでおくことが大切です。
それは、単に「内申点を稼ぐため」というだけではありません。学力と人間性を高め、大人になってからの職業選択の幅を広げて、豊かな人生をつくっていくための大切なステップだと言えるでしょう。
コメント