中学生の不登校率は、文部科学省の調査によると年々増加しており、2021年には中学生の20人に1人が不登校というデータが出ています。少なくともクラスに1人は不登校の生徒がいる、という計算になります。
こうした状況を受けて、近年はさまざまな高校で不登校の生徒を受け入れる態勢が整ってきています。いろいろな事情で中学校に通えていなくても、高校進学をあきらめることはありません。
この記事では、不登校の中学生やその保護者に向けて、高校進学を目指すために知っておきたい情報をお伝えします。高校での新しいスタートの実現のために、ぜひ参考にしてください。
不登校でも入学できる高校
不登校の状態が続くと、授業を受けられず欠席も多くなります。「こんな状態で入学できる高校があるだろうか?」と心配している中学生や保護者も多いかもしれません。
結論から言うと、中学で不登校でも入学できる高校はあります。どのような高校があるのか、具体的に見ていきましょう。
通信制高校
通信制高校は毎日登校する必要のない高校です。基本的には自宅で、教科書やワーク、動画などを用いて学習し、定められた課題(レポート)を指定の日時までに提出します。わからないことがあれば、電話やメールで先生に質問することもできます。
定期的な登校日(スクーリング)はありますが、それ以外は自宅など好きな場所で、自分のペースで勉強できるため、登校に不安のある生徒にとって負担感の少ない高校と言えます。
定時制高校
定時制高校とは、もともとは日中働いているなどの理由で全日制高校に通えない人のために作られた学校です。多くの定時制高校は夕方から夜にかけて1日4時間程度登校して授業を受けますが、近年は昼間の時間に開講している定時制高校もあります。
通信制高校と違って毎日登校する必要はありますが、1日4時間と短い時間ですむため、全日制の高校と比べるとやはり負担が少なく、不登校を経験した生徒にも通いやすいと言えるでしょう。
サポートのある全日制高校
「中学は不登校だったけど、通信制や定時制ではなく全日制の高校に行きたい」と思っている人もいるでしょう。全日制の高校の中にも、不登校で欠席が多かった生徒や成績が振るわなかった生徒を積極的に受け入れてサポートしてくれるところがあります。今はインターネットでも情報収集できますので、調べてみるとよいでしょう。
全日制の場合は、平日の朝から夕方まで、1日6時間ほどの授業を受けることになります。全日制高校を考えるなら、まずは生活リズムを整えることを意識しましょう。
チャレンジスクール
東京都では「チャレンジスクール」も不登校経験者を積極的に受け入れています。不登校などのために能力や適性を十分に生かしきれなかった生徒が目標を見つけ、それに向かってチャレンジすることを目指す高校です。内申書が不要で、単位制による幅広い科目選択が可能であり、カウンセリング体制が充実しているなど、サポート体制が充実しています。
大阪府や神奈川県では「クリエイティブスクール」、埼玉県では「パレットスクール」という名前で、同様の取り組みをする高校が設置されています。
不登校が高校受験に与える影響
不登校で欠席が多いと、高校受験にどのように影響するのでしょうか。
受験の際に作成される「調査書」に欠席日数がどのように記載されるのか、高校がそれをどう判断するのかを見ていきましょう。
欠席日数
調査書には、中学校での欠席日数が記載されるのが一般的です。ただし、中学校3年間の欠席日数がすべて記載されるのか、中3時の欠席日数のみが記載されるのかは、都道府県ごとに異なります。もし中3時の欠席日数のみの記載であれば、1、2年のときの欠席は反映されないことになります。
公立高校は欠席日数をどのように見るのか
都道府県によっても異なりますが、公立高校では目安として、3年間の欠席日数が30日を超えると審議の対象になると言われています。しかし、上でもお伝えしたように、学校によって3年間の欠席を見るのか中3時の分だけを見るのかも異なりますし、一概に「30日を超えたらもう無理だ」というわけではありません。
不登校の生徒について、申告書を出すことで欠席日数を不問にしたり、面接など特別な選考方法を用意したりするなどの配慮をしてもらえる場合もあります。募集要項を確認してみましょう。
私立高校は欠席日数をどのように見るのか
私立高校の一般入試では調査書がそれほど重んじられないと言われており、欠席日数が多くても学力検査で得点できれば合格できることがあります。そのような高校であれば、不登校だった生徒にも十分チャンスがあります。あきらめずに勉強をがんばっておきましょう。
私立でも推薦入試の場合は、欠席日数の上限が学校ごとに定められています。志望校の募集要項を確認しましょう。
内申点
内申点は、入試の合否に大きく影響します。公立高校ではどの都道府県でも判定に活用されており、私立高校でも内申点が高ければ事実上の合格確約を得られる場合があるなど、近年重視される傾向が高まっています。
不登校で中学校の定期テストを受けられなかった場合は、高い内申点を獲得することはどうしても難しくなります。その意味では、受験でやや不利になってしまうことはやむを得ないと考えておきましょう。
不登校でも高校受験は可能!確認すべきポイント
「定期テストを受けていないと不利になるのか…」と心配になったかもしれません。しかし、冒頭でお伝えしたように、不登校でも高校受験は可能です。不登校の中学生が受験にあたって確認すべきポイントを整理しましょう。
調査書を重視しない高校を探す
上でお伝えしたように、私立高校の中には調査書を重視しない学校があります。その場合、不登校で欠席が多くても、学力検査で合格ラインに達することができれば合格できる可能性があります。そのような高校を探して受験勉強をがんばれば、合格も夢ではありません。
3年時の内容のみ調査書に記載されるなら
調査書に3年時の内容のみが記載されるのであれば、1,2年時の状況は内申点に影響しません。3年の出席日数を確保し、勉強をがんばって内申点を上げることで、受験にも対応できます。
1,2年時の状況が調査書に記載される場合も、3年時の状況により比重が置かれている場合には、3年時にがんばることで挽回が期待できます。お住まいの都道府県の内申点の計算方法を確認してみましょう。
不登校からの高校受験はまず相談
ここまで、不登校からの高校受験の可能性をお伝えしてきましたが、「でも、自分の場合はどうだろう?」「具体的には、今からどうすればいいんだろう?」など、まだ不安が残っている人もいるのではないでしょうか。
そんなときは、家族だけで悩まず、専門家に相談することが大切です。
信頼できる学校の先生に相談
不登校からの高校受験を考えるなら、まずは、信頼できる中学校の先生に「高校受験をしたいと考えている」ということを伝え、志望校をどこにすべきか、これからの勉強をどう進めたらよいかなどを率直に相談しましょう。
中学校の先生は、内申点について、また近隣の各高校について、くわしい情報を持っていますので、適切なアドバイスをもらうことができるでしょう。
不登校専門の塾や家庭教師などに相談してみる
なんらかの事情で中学校の先生に相談しづらいと感じる場合は、不登校専門の塾の先生や家庭教師に相談するという手があります。
塾の先生や家庭教師も、これまでの多くの受験生のデータや高校情報を持っていますので、それらと照らし合わせてアドバイスをしてくれるはずです。受験までの勉強の進め方も、ひとりひとりに合わせたカリキュラムで指導してもらえますので、相談してみるとよいでしょう。
まとめ
不登校の中学生が高校進学を目指すために知っておきたい情報をお伝えしました。今からがんばれば高校進学は可能だということがおわかりいただけたでしょうか。
中学の時に不登校でも、高校で新しいスタートを切ってその先の人生を切り開いた人はたくさんいます。高校進学を望むなら、先生や家庭教師に相談しながら自分に合った高校を探し、あきらめることなく勉強することで道は開けます。ぜひがんばってください。
合格を心からお祈りしています!