早稲田大学の理工学部は「基幹理工学部」「先進理工学部」「創造理工学部」の3つの学部に分かれています。基幹理工学部は特に理学、工学、映像など、理系に関する分野をオールマイティーに研究しています。毎年高い就職実績や研究実績を誇っているため、最難関国公立大学の併願校となることが多く、将来技術者や研究職として働くことを目指す受験生から高い人気を集めています。
今回は早稲田大学基幹理工学部の紹介と、各教科の基本情報、主な進路や受験生の方からよくある質問を、現役早大生(法学部・2年)が解説します。
早稲田大学基幹理工学部の基本情報
早稲田大学基幹理工学部の基本情報を解説していきます。
設立:2007年
所在地:〒169-8555 新宿区大久保3-4-1(西早稲田キャンパス)
アクセス:東京メトロ 副都心線 西早稲田駅直結
JR 山手線 高田馬場駅から徒歩15分
西武新宿線 高田馬場駅から徒歩15分
東京メトロ 東西線 早稲田駅から徒歩22分
都営バス 新宿駅西口ー早稲田、早大理工前バス停
都営バス 高田馬場ー九段下、早大理工前バス停
学生数:2,229人(全体:38,776人)※2023年5月1日時点
男女比:8:2 ※2023年5月1日時点
学科:数学科、応用数理学科、機械科学・航空宇宙学科、電子物理システム学科、情報理工学科、情報通信学科、表現工学科
※出典:https://www.waseda.jp/top/access/nishiwaseda-campus 、https://waseda.app.box.com/s/181q6hd6jwbl1yrs02i5u5p3rtz35yd8
因みに西早稲田キャンパスはとても立地が良くて、副都心線で西早稲田駅から池袋駅まで4分、渋谷駅まで11分、新宿駅まで13分(乗り換えあり)で到着することができます。
学系・学科について
早稲田大学基幹理工学部は最初は学科に所属せず、「学系」に所属して、2年生に進級するタイミングで希望の学科に所属します。
「学系」とは
学系とは特に専門の科目を決めず、数学や理工系の素養を幅広く養うために設置されているものです。学系によって進振りされる学科は異なっています。詳細は出典元の公式HPをご覧ください。
「数学科」とは
数学科の特徴の一つとして、後述の応用数理学科と連携しているため、両方の講義を受講できることです。また、セミナー形式の授業(少人数制の授業)を積極的に取り入れているほか、大学院進学を支援するプログラムも設置しています。
中学、高校数学の教職課程を取得できるため、将来数学の教員を目指している方にはうってつけの学科となっています。
※出典:https://www.fse.sci.waseda.ac.jp/dept/math/
「応用数理学科」とは
応用数理学科は数学と理学の両方が必要な分野について研究しています。具体的には統計学(統計数理)や自然現象(現象数理)、プログラミング(情報数理)について研究します。
出典:https://www.apmath.sci.waseda.ac.jp/curriculum
「機械科学・宇宙航空学科」とは
機械科学・宇宙航空学科は文字通り機械工学や宇宙航空学について研究しています。特に宇宙航空学の研究に力を入れているようです。ANAやJAXA、エアバスなど宇宙航空分野で国際的に有名な企業と提携しているので、寄付講座やインターンシップなど、他の学部学科にはない貴重な機会が整備されています。そのため、航空機、宇宙機の研究開発に興味のある方にとっては必見の学科となっています。
出典:https://www.amech.waseda.ac.jp/
「電子物理システム学科」とは
電子物理システム学科は主に電子工学分野について研究している学科です。具体的にはナノテクノロジーや通信技術、IOTなどに関する研究を行っています。
出典:https://www.eps.sci.waseda.ac.jp/
「情報理工学科」とは
情報理工学科は主にソフトウェアやコンピューターについて研究しています。具体的には人工知能や自動運転、コンピューターグラフィックスなどがあります。
出典:https://www.cs.waseda.ac.jp/
「情報通信学科」とは
情報通信学科は主に通信ネットワークやコンピューター技術について研究しています。具体的には自然言語処理(ChatGPTなどの生成AIのベースとなる技術)などがあります。
出典:https://www.fse.sci.waseda.ac.jp/dept/cc/
「表現工学科」とは
表現工学科はメディアやコミュニケーションに特化した学科です。具体的な研究内容としては立体視(3D)映像やコンピューターグラフィック等が挙げられます。
出典:https://www.ias.sci.waseda.ac.jp/index.html
偏差値と倍率・合格最低点
受験する大学・学部の偏差値や合格最低点は、模試を受ける際や過去問対策をする際の目標値となりますので、対策を始める前に知っておくことはとても重要です。
基幹理工学部は学系によって偏差値や倍率等が異なるため、注意が必要です。
以下、2024年度の偏差値と倍率、合格最低点を学科別に表にまとめましたので、ご覧ください。
なお2025年度より学系が再編されて従来の3つから4つに増えるため、特に合格最低点には注意してください。
学科 | 偏差値 | 倍率 | 合格最低点(360点満点) |
学系Ⅰ | 65.0 | 2.8 | 196 |
学系Ⅱ | 65.0 | 3.6 | 205 |
学系Ⅲ | 65.0 | 5.0 | 208 |
※出典:https://passnavi.obunsha.co.jp/univ/3190/difficulty/
https://passnavi.obunsha.co.jp/univ/3190/bairitsu/ https://passnavi.obunsha.co.jp/univ/3190/border/
偏差値はどの学系も同じ数値ですが、他を見ると学系Ⅲ(2025年度より学系4)が一番人気が高いことがわかります。学系Ⅲは情報理工学科、情報通信学科、表現工学科の、主にコンピューターに関する分野の研究を行うことになります。
試験科目の配点・試験時間
基幹理工学部の一般入試における、試験科目ごとの配点・試験時間を解説していきます。
以下、2025年度の各科目の配点・試験時間を表にまとめたので、ぜひご覧ください。
科目名 | 配点(点) | 試験時間(分) |
外国語(英語) | 120 | 120 |
数学(数Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、A、B (確率分布と統計的な推測を除く) ) | 120 | 120 |
理科(「物理基礎・物理」、「化学基礎・化学」、「生物基礎・生物」から2つ選択) | 120(原則1つの科目につき60) | 120 |
合計 | 360 | ー |
配点がどの教科も均等に割り振られていることが特徴です。そのため、得意な教科の得点を伸ばすことが、合格への近道だと言えるでしょう。
加えて各教科それぞれ試験時間が、他の学部と比べて長いことが特徴です。長時間の試験に耐えられる集中力を身につけましょう。
基幹理工学部の理科は学系によって選択できる科目が異なっています。また、学系4は、「得意科目選考」という制度を設けています。これは学系が指定する科目で、特に優れた点数を得たとされる人は、仮に全教科の合計点数が合格最低点に達しなかったとしても、合格とみなされる制度です。詳細については公式HPをご覧ください。
各教科の基本情報
志望校の合格を目指すにあたって、本番で解答することになる試験問題の傾向と対策を知ることはとても重要です。
英語
出題形式は、例年大問が全部で5つあって、長文問題が2つ、文法問題が3つという構成です。
英語は多くの大学・学部の入試で一番高い比重を占めており、それに加えて対策するのに一番時間がかかる科目だとしている人もいます。さらに基幹理工学部の英語は日本の私立大学の中でも最難関レベルだとしている人もいるので、念入りな対策が必要となります。
詳細な傾向と対策についてはこちらの記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
数学
早稲田大学基幹理工学部の数学は、年度によっては最難関国公立レベルに匹敵するほどの難易度と言われており、抽象度が高く計算量の多い問題が出題されることが特徴です。そのため念入りな対策が必要となります。
試験問題は例年全部で5つの大問から構成されています。全て記述式で出題されていて、それぞれ独立した1つの大問につき小問が2〜3問程度出題されることがあります。
詳細な傾向と対策についてはこちらの記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
化学
早稲田大学基幹理工学部の化学は、他の科目と比べると標準的な難易度だと言われているため、なるべく高い得点を出せるようにしましょう。
試験問題は例年大問が計3つあり、マークシート式の問題と記述式の問題で併用されています。問題数が非常に多いことが特徴で、試験時間内にすべて解答することは難しいといわれています。
詳細な傾向と対策についてはこちらの記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
物理
早稲田大学基幹理工学部の物理は、難易度が比較的高いといわれています。そのため、なるべく失点しないように入念な対策が必要となります。
試験問題は例年大問が計3つあり、マークシート式の問題と記述式の問題が併用されています。問題数や計算量が比較的多いことが特徴で、知識や理解力のみならず、解答するスピードも求められています。
詳細な傾向と対策についてはこちらの記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
生物
早稲田大学基幹理工学部の生物は、全体的に標準レベルだといわれています。そのため、なるべく点数を取れるように対策をしっかりと行いましょう。
試験問題は例年大問が計3つあり、ほぼすべての問題が記述式の問題で、選択式の問題もいくつか出題されます。
詳細な傾向と対策についてはこちらの記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
オープンキャンパス情報
基幹理工学部の受験生は、試験本番に早稲田キャンパスか西早稲田キャンパスのどちらかの教室で受験することになるので、志望校合格のためのモチベーション向上のために実際に現地に赴くことはとても重要です。
早稲田大学は毎年夏に早稲田キャンパス、戸山キャンパス、西早稲田キャンパス、TWIns(先端生命医科学センター)でオープンキャンパスを開催しています。基幹理工学部を第一志望にしている方であれば、西早稲田キャンパスのオープンキャンパスに参加することをお勧めします。詳細は公式HP をご覧ください。
他にも地方に住んでいて、東京に直接赴くことができないという方向けに、オンラインでオープンキャンパスに参加することができます。こちらも詳細は公式HP をご覧ください。
4年間の学費と主な学内奨学金
早稲田大学は私立大学である上に、理系の学部なので国公立大学に比べると特に高額な学費が発生します。ここでは4年間で発生する学費の合計と、主な学内奨学金を表にまとめましたので、ぜひご覧ください。
4年間の学費(2025年度)
第1年度 | ¥1,847,000(うち入学金¥200,000) |
第2〜4年度 | ¥1,784,000 |
合計 | ¥7,199,000 |
結果的に最低でも4年間で約700万円強発生することになります。私立大学の理系学部は、実習・実験に使用する機械や施設などに費用がかかる上に、実験の補助をする教員が大量に必要であることから、特に高額な学費が発生します。
ちなみに国立大学は、理系の学部でも4年間で約243万円と法令で定められているのでその3倍程度高額なことがわかります。
(出典:https://www.hokugin.co.jp/cs/loan/gakushi/contents/001.html )
主な学内奨学金
前述の通り、基幹理工学部の学費は年間180万円程度のため、全額の負担が難しい方もいるかもしれません。しかし、早稲田大学は独自の「学内奨学金」を設けていて、すべて返済不要です。さらに学外奨学金とも併用できる(学外奨学金の規定によっては不可能な場合もあります)ので、より経済的負担を軽減することができます。
名前 | 奨学金額 | 奨学金支給期間 |
めざせ!都の西北奨学金 | ¥700,000 | 休学期間を除く4年間 |
紺碧の空奨学金 | ①入学検定料(大学入学共通テストの検定料は除く)および入学金免除②授業料、実験実習料、その他諸経費を全額免除③家賃補助・生活支援金として上限月額9万円 | 正規の在学中4年間まで |
※応募条件や、募集人数、選考内容等の詳細事項は、各奨学金の公式HPを参照してください。
他にも様々な学内奨学金も設けられているので、ぜひ早稲田大学奨学課の公式HPをご覧ください。学外奨学金につきましても該当する奨学金の各公式HPをご覧ください。
おすすめの資格
英語や簿記などの資格試験は、就活や大学院進学の際に自分の強みを表すのに役に立ちます。さらに司法試験や公務員試験のように、自分の将来を大きく変えるような資格もあります。
ここでは他の学部と比べて、基幹理工学部で取りやすい資格を解説します。
ITパスポート
「ITパスポート」とは、ITに関する基礎的な知識が証明できる国家試験のことをいいます。
(出典:https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/about/about.html )
近年では企業や省庁が採用面接でITパスポートの合格を確認したり、大学入試でも優遇措置を受けられたりすることがあります。
(出典:https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/about/student.html )
数学検定
数学検定は、就活の面接などで数学の知識をアピールするのに有用です。特に数学は「統計」と深い繋がりがあると言われており、近年統計に関する知識を持っている学生はとても重宝されています。そこで数学の資格を持っておくと、就活等の場面でとても有利になる可能性があります。
卒業生の主な進路
※以下出典:https://www.waseda.jp/inst/career/assets/uploads/2024/05/ac41a239371385b2d4b5afb2fc2bcb65.pdf
まず大まかな進路を解説します。公式の発表によると、2022年度卒業生の進路は以下の通りです。
進路 | 人数 | 割合 |
就職 | 158 | 27.9% |
進学 | 389 | 68.7% |
資格試験 | 3 | 0.5% |
その他 | 16 | 2.8% |
合計 | 566 |
一般的に理系の学部は、就職よりも進学を選ぶ方が多いといわれていますが、基幹理工学部も例にもれず大学院などに進学する人が圧倒的に多いことがわかります。
主な就職先
もし学部を卒業した後に就職することを考えているのなら、就職したい業種を予め考えておくとよいかもしれません。そこで卒業生の就職先の業種のグラフを公開したいと思います。
※2023年5月時点
伝統的に理工系の学部の卒業生の多くは、製造業などに技術職や研究職として就職することが多いといわれています。しかし近年では外資系のコンサルティングファームや商社等に、営業などの文系職として就職する方も増えているそうです。理系の学生は文系の学生と比べて理系に関する知識や専門性がより豊富で差がつきやすいため、文系職でも就職が有利に運ぶことがあるそうです。
よくある質問
ここでは受験生の方からよくいただく質問をまとめました。受験中や入学前は不安なことが色々あると思うので、ぜひ見ていってください。
- Q学系の併願は可能ですか?
- A
基幹理工学部は、学系間の併願は出来ません。
- Q先進理工学部や創造理工学部との併願は可能ですか?
- A
物理的に不可能です。例年先進理工学部、基幹理工学部、創造理工学部は試験日が重なっているためです。
- Q学生の雰囲気はどのような感じですか?
- A
一般的に理系の学部は大人しい人が多いといわれていますが、筆者の経験上実はそうでもなくて、陽気な人も少なくないです。
- Q理系の学部は忙しいと聞くのですが、実際本当に忙しいのですか?
- A
質問の通り、文系と比べると理系は圧倒的に忙しいです。筆者が所属する大学のサークルの先輩(先進理工学部)曰く、とにかく実験が忙しいそうです。日によっては朝の1限から夕方の5限の時間まで研究室にこもることもあるそうです。さらに1年生は試験勉強が忙しいだけでなく、レポートの課題も同時に多く出されるため、特に7月や1月の試験期間は本当に大変だそうです。しかし要領よく単位を取ることができる人は、サークルやバイト、ボランティア活動も積極的に取り組めるそうなので、完全に勉強一本の生活を強いられるほど忙しいわけではないそうです。
- Q理系の学部は文系の学部と比べて就活等が有利だと聞いたのですが、本当ですか?
- A
本当です。前章の「卒業生の主な進路」で述べた通り、理系の学生は文系の学生に比べて理系に関する知識や専門性が豊富なため、営業などの文系職でも差がつきやすく有利です。また、研究室によっては大学側からの推薦で就職先が決まることもあるので、より就活を容易に進めやすいです。
- Q理系でも公務員になることは出来ますか?
- A
十分可能です。一般的に公務員は文系のイメージが強いですが、近年では理系の学生も多く採用しようとしています。例えば文系の花形とも言われている、国家公務員総合職試験(いわゆる「官僚」になるための試験)では、理系の試験を受けることができる「技術系」の区分が存在します。地方公務員でも「技術職」という枠で採用しています。
まとめ
今回は早稲田大学基幹理工学部について解説しました。
基幹理工学部は高い研究実績を上げていることから、毎年多くの受験生から人気を集めている学部であるため、受験生間の競争は激しく、試験の難易度が高いことが特徴です。
しかし著名な先生のもとで、勉強や研究に打ち込めるようなカリキュラムを用意しているため、将来理工系の学部を卒業して研究者や技術者として働くことを希望している方にとっては、とても魅力的な学部だということができるでしょう。
最後に、「第一志望に合格することは簡単なことではない」とよく言われています。筆者も法学部を第一志望に受験勉強をしていた時は、中々上がらない偏差値や過去問の正答率によく頭を悩ませていました。しかし最後まで地道に過去問演習を積み重ねた結果、本番では今までで一番高い正答率で合格することができました。どうか「地道に頑張る」ことを意識しながら、第一志望への合格をつかみ取ってください。筆者は早稲田で待っています。
instagramアカウント『早大受験LAB』では、未来の早稲田生を創るため、「ホンネで語る『早稲田合格ストーリー』」「ホンネで語る『受験生へのアドバイス』」「ホンネで語る『早稲田でのキャンパスライフ』」等、早稲田大学を目指すあなた必見のコンテンツを毎日更新しています!
さらに早大受験LABは、新しく勉強場所が欲しい方向けに、オンライン自習室を始めました!こちらのオンライン自習室は自宅での自習はもちろん、現役早稲田生に受験相談をいつでもすることができます!入退室自由、相談回数無制限、相談内容自由となっているため、いつでも気軽に利用でき、相談もできます!2024年12月末までは、完全無料でご利用できます!興味のある方は、こちらのフォームから応募してください!