夏休みが近づくと、保護者の間で「塾の夏期講習を受けさせるかどうか」「どこの塾の夏期講習がよいか」などが話題に上ることもあるのではないでしょうか。しかし、ふだん通塾していないと、「そもそも、夏期講習って何をするの?」「たくさんの塾から、どう選べばいいの?」と疑問を抱く保護者も多いようです。
そこで、この記事では、小学生の夏期講習の特徴やメリット、選ぶ際の注意点などを詳しくお伝えします。
小学生の夏期講習の効果、メリット
それなりの費用をかけて受ける夏期講習ですから、どんな効果があるのかが気になるところです。夏期講習には、もちろん様々な効果・メリットが期待できます。
ここでは4点ご紹介しましょう。
学習の習慣を身につける
小学生の夏休みは約40日間と非常に長く、学校の宿題はあるにしても、かなりゆったりした生活になります。うっかりすると、朝寝坊してダラダラと過ごし、テレビやゲームで夜更かしをするなど、生活リズムが乱れやすいものです。
夏期講習に通うことで、学校に通うのと同じようなリズムで生活や学習を続けられます。夏休みを有意義に過ごせるのはもちろん、2学期のスタートもスムーズになるでしょう。
苦手な科目の対策
新学年に進級して1学期が過ぎ、勉強の得意・不得意が少しずつ出てくる頃です。これを放置したまま2学期を迎えると、苦手科目はますますわからなくなってしまいます。
学校の授業が進まない夏休みの間に夏期講習で苦手科目の復習ができれば、お子さんにも自信がつき、2学期以降の学習への意欲も高まることが期待できます。
実力を伸ばす
逆に、得意科目の実力をさらに伸ばせるのも、夏期講習のメリットです。
先取り学習や中学受験対策の夏期講習では、学校の授業より高いレベルの学習ができます。時間のある夏休みの間に、夏期講習で同じ目標を持ったライバルと机を並べ、切磋琢磨して実力を伸ばすことで、将来の進路の選択肢も大きく広がります。
実力を客観的に把握できる
数値で自分の実力を客観的に把握できることも、夏期講習の魅力です。
小学校では順位や偏差値を意識する機会はあまりありませんが、夏期講習であれば確認テストや模擬試験などで順位や偏差値が出され、自分の位置を確認することができます。中学受験対策のコースでは、特にそのメリットが大きいでしょう。自分より上のライバルの存在を知り、負けたくないとやる気に火がつくお子さんも多いようです。
小学生の夏期講習の目的
小学生が夏期講習を受ける場合、その目的は「中学受験対策」と「学校の授業の復習・補習」に分かれ、それぞれ、内容や雰囲気が大きく異なります。お子さんに必要なのはどちらのタイプなのかを見極めて選びましょう。
中学受験対策
中学受験を考えている小学生の多くが、夏期講習を受けています。小学校の授業だけでは、難関中学の入試には対応しきれないからです。塾によっては、志望校の過去の出題傾向に合わせたコースを設けたり、模擬試験で弱点を洗い出して補強を行ったりと、徹底した受験対策を行っています。中学受験を考えるのであれば、積極的に活用しましょう。
費用相場は、5年生までが4万円~15万円程度、受験学年である6年生になると平均しておおよそ16万円~20万円程度と、かなり高額になります。早めに備えておきたいものです。
学校の授業の復習・補習
一方、学校の授業の復習や、苦手な部分の補習のために夏期講習に通うこともあります。中学受験対策とは異なり、学校の教科書に沿って重要事項を復習し、苦手科目の克服を目指して対策を行うのが一般的です。難関中学を受験する予定はないけれど、公立中学校の入学を前に小学校の内容をしっかり身につけておこう、というお子さんにはこちらがよいでしょう。
この場合の費用は、受験対策と比較すると抑えめで、学年による差もあまりなく、2万円~5万円程度です。
塾による指導スタイルの違い
夏期講習の指導スタイルには、「個別指導スタイル」「少人数集団型スタイル」「大人数集団型スタイル」の3つがあります。塾選びの際には、どのスタイルなのかを必ずチェックしましょう。それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。
個別指導塾スタイル
個別指導塾スタイルでは、はじめに詳しいカウンセリングを行い、一人ひとりの目的や苦手科目などに合わせて個別の学習カリキュラムを組むのが一般的です。学校の補習から中学受験対策まで幅広く対応していますが、一人ひとりに手厚い分、人件費などの関係で費用は高めです。
塾によっては講師が学生アルバイトであることも多く、指導力にムラがある場合もあります。体験授業を見学したり、詳しい話を聞いたりして、指導体制や担当講師の指導力をチェックする必要があります。担当講師との相性が良くない場合は変更ができるのかどうかも、事前に確かめておきましょう。
また、「個別指導」とうたいながら、実際には自習をさせて見回るだけ、という塾もあるので注意が必要です。学習進度の管理が適切になされているかどうかもチェックしましょう。
少人数集団型指導スタイル
10名前後の子どもが、1人の講師から同じ授業を受けるスタイルです。個別指導塾のマンツーマン方式ほどではなくても、比較的きめ細やかな指導が期待できます。地元密着型の個人経営塾に多いスタイルです。大人数の塾と比べると、和気あいあいとしたアットホームな雰囲気のところが多いので、塾に通うのが初めてのお子さんでもなじみやすいでしょう。
ただしそのぶん、受験に向けた緊張感や合格実績が今一つの場合もあります。中学受験対策として通うのであれば、その点を事前に確認したほうが良いでしょう。
また、個別指導スタイルと同様、講師との距離が近いぶん相性が学習に影響しやすいので、その点もチェックしておきましょう。
大人数集団型指導スタイル
大手の受験対策塾に多いスタイルです。複数の小学校から生徒が集まり、難関中学合格という目標に向けて、高い意識で競い合いながら力を伸ばせるのが魅力です。カリキュラムや指導体制がしっかりしており、合格実績も高い傾向があります。
一方、個別や少人数の塾と比べると授業スピードも速く、内容もハイレベルであることが多いため、初めて塾に通う場合やのんびりしたお子さんの場合は、雰囲気にのまれてモチベーションが下がることも考えられます。親子で目的を確認し、見学や体験をして納得してから申し込むのがおすすめです。また、授業についていくのが大変になった場合の個別サポート体制についても、事前に確認しておきましょう。
中学受験対策で夏期講習を行っている主な塾
次に、実際に中学受験対策の夏期講習を行っている塾を8校ご紹介します。
それぞれの塾ごとの特徴や、夏期講習の内容を簡単にまとめましたので、比較検討の参考にしてください。詳しくは、各校のホームページ等をご確認ください。
SAPIX
難関中学の受験対策で有名な塾です。日本最難関とされる開成中学・桜蔭中学などにも多くの合格者を出しています。
SAPIXの夏期講習は、通常の時期の授業の一環として行われます。夏期講習だけの「完結型」ではなく、年間カリキュラムの中に夏期講習が位置付けられている形です。また、授業進度がかなり速いのも特徴です。
日能研
首都圏を中心に中学受験塾として日本全国で知られており、難関中学への合格実績も豊富です。
日能研の夏期講習は、新入塾のお子さんでも対応できるよう、復習中心に組まれています。1学期の振り返りをしっかりして2学期を迎えたい場合には適しているでしょう。
一方、すでに1学期の内容を十分理解しているなら、物足りなく感じられるかもしれません。お子さんに必要な内容かどうか、事前にカリキュラムを確認して判断しましょう。
早稲田アカデミー
「早稲田」を冠していますが、創業者が早稲田大学出身だったことから来るもので、大学との関係はありません。開成中学や麻布中学などに多くの合格者を輩出しています。
夏期講習では、まず1学期に学習した内容の定着を図り、そのうえで2学期のカリキュラムの先取り学習が行われます。4年生までは基礎学力と学習習慣の定着を中心に土台作りをし、5,6年生では志望校別に3つのコースに分かれます。
四谷大塚
老舗の受験対策塾として知られています。中学受験のバイブルとも呼ばれる、「予習シリーズ」というオリジナル教材が有名で、他塾でも採用されるほど人気です。
夏期講習では、1学期の復習と2学期の先取り授業が行われます。学力の高いお子さんであれば、受講の必要はないかもしれません。2学期の先取り授業は、2学期以降のカリキュラムにも含まれています。
希学園
難関国立・私立中学受験を専門とする進学塾です。関西を中心に首都圏にも教室があり、灘中学・東大寺学園中学などに多くの合格者を出しています。
6年生の夏期講習は、塾が定めるテストの合格者のみに受講資格が与えられます。難関校合格を目標にした、レベルの高い講習が行われています。
塾通いが初めての小学3年生を対象にした、夏の短期間の体験学習も実施されています。
馬渕教室
関西における中学受験塾として近年注目されている塾です。合格実績でも老舗を抜き、浜学園に次いで関西ナンバー2と言われるまでに成長しています。
夏期講習では、1学期に学んだことの総点検、弱点のチェックと補強ができます。ふだん通塾していないお子さんの体験の場としても位置付けられており、個別懇談会では、家庭学習や中学受験などの相談にも応じています。
浜学園
関西ナンバー1の実績を誇る老舗で、灘中学をはじめ数々の難関私立中学への入学者数で日本一に輝く塾です。
夏期講習で初めて塾通いをするお子さんも多く、事前のテストによって学力ごとにクラスが編成されます。予習不要がうたわれており、毎回復習テストを実施して学習到達度や弱点を確認しながら徹底的に身につけることを目指しています。
名進研
愛知県と岐阜県に37校を構える、東海地方で合格実績ナンバー1の塾です。4年生以上ではSAPIXのテキストが導入されています。
夏期講習では、東海地区の私立中学入試に特化したノウハウをもとに、入試問題を確実に攻略するために必要な知識の整理と定着をはかります。
夏期講習が始まってからの注意点
どんなに素晴らしい夏期講習に通わせても、子ども任せでは十分な効果が得られません。保護者の細やかな見守りが必須です。
夏期講習期間中、保護者としてどのような点に注意したらよいかを見ていきましょう。
テキストやノートを確認
夏期講習では、お子さんの学力や目的に合った指導を受けることが何より大切です。そのために、塾から配付されたテキストや、お子さんが書いたノートは、こまめにしっかり確認しましょう。お子さんにたずねるだけでは、正確なことはわかりません。「大丈夫!」と言っていても、実はついていけていなかった、ということもあります。
テキストやノートを確認して、お子さんの理解度が心配な場合は、早めに塾に相談してアドバイスをもらいましょう。
塾に子どもの様子を確認
塾によっては夏期講習中のお子さんの様子をこまめに教えてくれるところもありますが、そうでない場合は、こちらから問い合わせて確認することも考えましょう。保護者からは見えない様子がわかることもあります。
問題点があればアドバイスをもらう機会になりますし、よくがんばっているようであれば家庭でもほめて、モチベーションアップにつなげることもできるでしょう。
引き続き通塾の検討
夏期講習に通ってみて、その塾をお子さん自身が気に入り、保護者から見ても成績アップに効果があると判断できれば、2学期以降も通うことを検討してもよいでしょう。塾に相談し、今後のカリキュラムや費用を確認します。定員に達すると入塾できなくなることもあるので、少しでも可能性があれば早めに相談しておく方が安心です。
小学生の夏期講習費用
「夏期講習の目的」のところでも少し触れましたが、夏期講習の費用は小学生でもそれなりにかかるため、事前にしっかり見積もっておく必要があります。あらためてチェックしておきましょう。
中学受験対策の場合
中学受験対策コースの場合、4~5年生で4万円~15万円程度と、塾によって、また、指導形態によっても、少し開きがあります。
6年生になると、受験対策として受講のコマ数が増え、指導も手厚くなる分、平均しておおよそ16万円~20万円程度と、どの塾でも高額になる傾向が見られます。
学校の予習、復習対策の場合
学校の予習・復習対策の夏期講習では、中学受験対策の講習と比べると、ほとんどの場合費用は比較的少なくてすみます。学年による費用の差はあまり大きくなく、2万円~5万円程度が一般的です。
夏期講習の申し込みの流れ
夏期講習についてここまで見てきて、「受講を検討したい!」と思われた方もいらっしゃることでしょう。夏期講習に申し込む場合はどのような手順で行えばよいのか、申し込みの流れを確認しましょう。
資料の取り寄せ
各塾のホームページを見ると、夏期講習の特設ページが設けられているところが多く、そこから「お問い合わせ」や「資料請求」ができます。ホームページの情報を確認したうえで資料請求をしましょう。
資料を確認、比較
複数の塾の資料を取り寄せ、内容を比較検討します。
以下のような項目をチェックしましょう。
*夏期講習だけで完結したカリキュラムか
*お子さんの学力や目的に合ったレベルか
*お子さんの性格に合った雰囲気や指導形態か
*個別相談や自習室など、講習以外のサポート体制はどうか
*通いやすい立地であるか
*家計に無理のない費用か
問い合わせ
資料を取り寄せても、それだけではわかりにくいこともあるものです。その場合は遠慮なく問い合わせをしましょう。多くの塾では、電話での問い合わせを受け付けているほか、ホームページに問い合わせフォームを用意しています。
お子さんの学力や性格など、受講申し込みに当たって不安なことは遠慮なく相談し、塾の雰囲気や注意点などを質問しましょう。その際の対応の丁寧さも、検討材料の一つとなるでしょう。
面談
受講申し込み前に個別面談を行う塾もあります。その場合は、学校の成績表やテストなどを持参し、お子さんの現状を伝えましょう。それに対して、どのような対応が可能なのか、どこまで伸ばせそうかを具体的に説明してくれる塾であれば安心できます。
また、面談の際に可能であれば授業見学をさせてもらいましょう。講師の雰囲気や通塾生の取り組み状況、自習室などの様子は、事前にチェックしておきたいものです。
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まとめ
小学生対象の夏期講習がどのようなものか、指導形態によるメリット・デメリットや、選ぶ際の注意点などをお伝えしました。
夏期講習は、上手に利用すればお子さんのモチベーションアップと成績向上に非常に役立ちます。特に、中学受験を考えているのであればぜひとも検討したいものです。お子さん本人ともよく話し合い、何を目指して、何のために通うのかをはっきりさせたうえで、最適な塾選びをしてください。
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